料理も家具も建物も、
すべて自分の手で。
「家具&カフェ ブーオ」
士幌市街からすこし西へ外れたところ、畑が広がる広大な十勝平野にある小さな森の中にお店をかまえる、家具&カフェ ブーオ。
夏は緑にあふれています。
店内からも美しい緑を眺めることができます。
店内にはかわいい動物たちも。
犬や、
猫や、
お店の外には馬も。
豊かな自然とかわいい動物たちに癒される「家具&カフェ ブーオ」
今回取材班は士幌に住んでいる人しか知らない「家具&カフェ ブーオ」の魅力を知るために事前に士幌町民の方へアンケートを行いました。
それではさっそく、アンケートで出た声をもとに魅力に迫っていきたいと思います。
オリジナルにこだわったメニュー開発
―スモークに関してたくさんのコメントがありました!
もともと家具屋を営んでいて途中からカフェを始められたと思うんですが、
スモークを始めようと思ったきっかけは何だったんですか?
燻製はもともと本州にいた頃に趣味で作っていたんですよね。ぼくらのカフェはとにかくオリジナルのメニューをつくろうと決めています。うちのかみさんは料理は上手ですが主婦ですから、他と同じものを出してても街から外れたこの店に行く動機にはならないよなって思って、オリジナルメニューを提供するということをコンセプトにしています。ぼくらのカフェっていうジャンルのお店のメニューのイメージがまさにオリジナルであることなんですよ。そういう思いで始めたからカレーもチャーハンも他とは違うものを提供しています。
―ブースパというメニューへのコメントも非常に多かったです。
ブースパとはいったいどんなメニューなんですか?
ブースパっていうのは、ぼくらの故郷に原型のようなメニューがあって若い頃に食べていたんですよね。いざカフェのメニューをつくろうっていう時にちょうど故郷にかえってそのお店に行ったんですけど、そのメニューが無くなっていて。よし、これはぼくらがやってもパクリにならないぞと(笑)半球形のパンをくり抜いて、中にパスタとサラダを入れて。これがぼくらのカフェの原点ですね。パンも自分のところでつくっています。
―準備が大変なのかなと思うんですが、ブースパは数量限定で販売しているんですか?
ないですね。うちって人数が来ても意外なほどメニューがあるから同じものに集中しない傾向があるんですよ。その分つくるほうは大変ですけどね。
―豆腐ハンバーグへの声もありましたが、こだわりはありますか?
豆腐ハンバーグはヘルシーにつくろうと思っているから、鶏の胸肉を使ったり、ひじきを入れてみたり、味付けのソースも野菜を使ったオリジナルソースを使っていますね。
―本当にオリジナルメニューが多いなと感じるんですが、どうやって新しいメニューを考えているんですか?
単純に絞り出しているだけですね。他にないものっていうところと健康に留意したものというところの2点を意識して、あと僕が食いしん坊なのでメニューはどれも多めにしています。カフェってあっさりとしているところが多いけど、うちは僕基準なので男性でも満足していただけると思います。
―全座席に知恵の輪があるのが気になりました。置かれている理由はありますか?
やっぱり退屈するでしょ?最近のカップルはスマホしか触らないから(笑)ぼくらもそんなに深い意味なく置いたんですけど、男の人はやりこんじゃって逆に会話が無くなってしまって(笑)メニューも見ずにやる人もいますね(笑)うちのお店は結構、料理を提供するまでに時間がかかってしまうから、楽しく時間を過ごしてもらえたらいいなと思ってね。ハンバーグはさすがに注文がきてから練るわけにはいかないから作り置きしてますが、それ以外はほとんど注文が来てから、全部作っているので時間がかかるんです。
100%全てを自分でつくる
―このお店をはじめられて何年になりますか?
カフェが17年、家具は23年くらいかな。名前はずっとブーオです。
この場所でお店を始める前は上士幌町の廃校になった小学校で4年ほど工房をしていました。校舎や体育館をひとりで自由に使わせてもらってましたね。
上士幌町の方に学校の建物を購入できないかと交渉したんですけど、公共の財産なので個人で購入することはなかなか難しくて、自分のお店をつくるために土地を探して今の場所に行きついたという感じです。
―元々出身は十勝ということですか?
出身は岐阜県ですね。元々は名古屋でサラリーマンをしていたんですけど、バブルの時代で忙しくて嫌になってしまって、ログビルダーに憧れてログハウスメーカーに転職して長野県に移住しました。長野には3年くらいいたんですけど、バブルで土地の値段が10倍になってこれじゃ自分でログハウスをつくることはできないなと思って、北海道の牧場アルバイトをしようと思って来たのがたまたま士幌町でした。
―北海道最初の土地は士幌町だったんですね。
夫婦で移住して士幌町の新田エリアの農協の牧場に住み込みでお世話になりましたね。牧場のアルバイトは期間が決まっていたから、一度本州に帰ったんですけど、北海道のことが忘れられなくて、結果的に移住してちゃったという感じですね。移住して帯広市の職業訓練学校で1年間木工の技術を勉強して、上士幌町で工房を始めて、先ほど説明した経緯で、このお店を開業するに至りました。自分でつくるのが夢だったから基礎と機械だけ建築屋さんにお願いしてあとは全部自分たちで作ったんですよね。その5年後にはカフェの増築を全部自分たちでやりましたね。
―私が士幌に来て夫に初めてデートで連れてきてもらったのがブーオさんでした!
士幌の方は何か晴れの日に使ってくださっているっていう印象が強くて、それは非常にうれしいですよね。
―ブーオさんは家具屋さんという風に肩ひじ張らずにライフスタイルを提案してくれますよね。こんな生活がしたいという思いは大型店だとなかなか表現できないなと思います。
ぼくらの名刺にもコンセプトとして「Enjoy Country Life」を掲げているんですけど、まさにそこなんですよね。田舎暮らしを楽しみたいっていうのが根底にあって。もともと建築士をやってて設計する方だったから、それって設計したもので評価されちゃうじゃないですか。ログハウスなんて特に図面を見ないで感性でやってしまう人も多いから建ててる職人さんの技量とかセンスが反映されるんですよ。だから100%自分でできる仕事をしたかったんですよね。そう思ってるとき、ある家具の巨匠の方の存在を知って、その方の「家具づくりは100%自分でやるものだよ」っていう言葉に感銘を受けて家具の道に進みましたね。
―ブーオさんに来たら士幌町でこんな暮らしができるんじゃないかってワクワクします。
実際、十勝以外や北海道外から来てくれる人も多いですね。本州から友達が来るとここに連れてきてくれたり。馬もいますし、いかにも北海道って感じですからね(笑)
この場所でお店を始めるのは簡単ではなかった
―アンケートで一番声が多かったのは動物についてでした!
元々子どもの頃から動物が好きだったんですか?
まあ好きっていうくらいで特別好きだったわけではなかったですね。ただ子どもの頃は犬を飼えない環境だったのでいつか動物を飼いたいなっていう思いがあって。妻は子どもの頃から動物に囲まれた生活をしていたので自然と動物を飼い始めましたね。北海道だからと思って馬も飼っちゃったり(笑)考えなしに馬飼ったら大変でしたね。乗馬したいなと思って飼いだしたけど乗れるようにするのが大変で結局ペットとして大切にしてます(笑)北海道でも馬は珍しいから馬に会いに来てくれる方も結構いますね。動物はこの店にはかかせない存在です。
―景色についての声も非常に多かったです!
お店を始めるにあたってこの場所を選んだ決め手は景色ですか?
そうですね。あまり開きすぎていないところがよかったので木がたくさん残っている場所を探しましたね。十勝って土地は広いけど、我々みたいに移住して開拓できるような場所って限られているんですよね。道路や傾斜のこと、水道電気、最終的には農地法や農業振興地域法も絡んでくるし。とにかく法律の網ですね。ここも紹介してもらってから建物を建てられるようになるまで1年近くかかりましたからね。北海道のこういうところは農地を守るようにできていますから、条件は厳しいですよね。
―ここにたどり着くまで自分で土地を探したんですか?
はい。それはもうやみくもに(笑)車で走っていいなと思う場所があったら法務局に行って土地の所有者を調べて「あそこの土地お宅のですよね」って(笑)もちろん「なんだお前は!なんでそんなこと知ってるんだ!」って言われて門前払いでした。やっぱり間に人がいてくれないと土地を手に入れるのは厳しいですよね。ここも地域の農業委員の方に間に入ってもらって地主さんと交渉してなんとか手に入れました。今みたいに移住者ウェルカムって感じはないですから、長野県から北海道に移住した20数年前っていうのは移住者は素性調査されましたからね。会社に「どういうひとか教えてください」って役場から電話が来たり、当時乗っていた車が長野県の松本のナンバーで、松本サリン事件があった時代だったから「やばいぞ」って言われたり(笑)とにかく移住なんてしてくるひとは疑われまくったんですよね(笑)
―苦労されたんですね。
十勝の全市町村に「こういう夢と思いを持って移住したいと思っています」と手紙を書いて送ったんですけどほぼ無視で、話をできたところも最終的には「厳しいですね」って言われることがほとんどでした。一番しっかりと受け入れようとしてくれたのが最初に工房を始めた上士幌町でしたね。移住が必ずしもいいわけではないですからね
帯広での新たな挑戦
実は帯広にお店を出すんですよ。
ーえー!そうなんですか!
いよいよ佳境に入ってきているんですよ。看板はこんな感じです。
今度はカフェはやらないんですよ。僕らのベースはものづくりだと思っているので、今度はハンドメイドの方を専門で。帯広のお店は水曜日から日曜日、夜遅くまでやろうと思ってます。基本は自分たちの家具とか陶器とかを販売して、十勝や北海道でクラフトをされている方の作品も展示販売したいと思っています。かっこよく言うと、ハンドメイドクラフト作家のセレクトショップですかね。
取材を終えて
家具も、料理のメニューも、パンも、お店の建物さえも100%自分の手でつくってしまう吉田さんのクラフトへの情熱に最初から最後までワクワクしていました。友達や恋人が士幌に来たらここに連れていきたい!と感じる素敵なお店です。
他では食べられないオリジナルメニューを食べるために、自然を感じるために、動物たちに癒されるために、こんな生活をしたいを表現する家具を手にれるために、田舎暮らしの楽しみ方を知るために、自分なりの楽しみ方でぜひ「家具&カフェ ブーオ」に足をお運びください!